骨造成の材料(骨材)

歯の模型を使って骨造成について説明してる女性歯科医師

骨移植の材料を特徴ごとに比較

骨造成術に欠かせない「骨移植材」について、ご存知でしょうか?世界的に使われている骨移植の材料は、大きく分けて4つのタイプに分類され、それぞれに特徴があります。4種類の材料別に、日本で使えるかどうか、メリット・デメリット、安全性といった特徴について、詳しく解説します。

自家骨

自家骨とは、手術を受けるご本人の骨を材料にした骨移植材のことです。
一般的には、下顎のオトガイ部と呼ばれる前歯の下部分や、下顎の親知らず付近にある下顎枝、上あごの親知らずの近くにある上顎結節から骨を採取します。必要とする骨量が多い場合は、腸骨という腰の骨や膝蓋骨から採集します。採取した骨は、移植方法によって移植部の形に沿ってブロック状に形成するか、粉砕するかが変わってきます。

自家骨は、安全性や骨形成能力、強度から、「ゴールデンスタンダード」とも言われるほどの骨移植材です。移植する骨は元々自分の身体の一部であるため、免疫による拒絶反応がなく、他の骨補填材と比較しても最も信頼性の高い骨移植材といえます。

デメリットは、一度に採取できる骨の量に限界があるほか、手術部が2ヵ所に増えることで、身体的な負担が増えることです。自家骨を採取する部分と骨を移植する部分と傷口が2ヵ所に増える為、術後の痛みや細菌感染のリスクが増えます。
また、下顎から骨を採取する場合は、下歯槽神経麻痺やオトガイ神経麻痺のリスクが伴います。多くの量が採取できる腸骨や膝蓋骨から採取する場合は、数日の入院が必要となり、大掛かりな手術になることがあります。

他家骨

他家骨は、患者様以外の人の骨で作られた骨補填材のことです。製造の違いにより、脱灰冷凍乾燥骨(DFDBA)と非脱灰冷凍乾燥骨(FDBA)に分かれます。
海外では非常にポピュラーな製品として一般的に流通されていますが、日本では認可が下りていません。

他家骨は、自家骨の摂取量が少ない場合の代用品として使用されるケースが多く、年間何百万件もの症例が報告されています。製品の製造過程では、厳格なドナーの選別や放射線による抗原性の除去などの厳しい製造過程をクリアしており、アメリカの医療用具・医療機器に対する安全事項を満たしています。

製品の安全性については問題ないと言われますが、免疫感染の問題は完全に拭いきれないため、100%安全な材料であるとは言い切れません。

異種他家骨

異種他家骨とは、自分と異なる生物から造られた骨補填材です。主に牛や豚の骨を原材料として製造されています。製造過程において、牛の骨を約300℃の高熱で焼却処理し、タンパク質やその他の成分を除去しています。安全性に問題がないと言われており、アメリカやヨーロッパの医療用具・医療機器に対する安全事項を満たしています。

異種他家骨は、周囲の組織と結合し骨に転換する作用に優れています。様々な研究結果で骨造成の効果は証明されており、臨床の現場で頻繁に使用されています。しかし、狂牛病やヤコブ病などのリスクが低いと言われているとはいえ、心象的にはあまりよくありません。

人工骨

人工骨とは、人工的に生成された代用骨のことです。原料は人工ハイドロキシアパタイト、β-リン酸三カルシウム、焼石膏、生体活性ガラスなどに分類されます。中でも最も一般的に使用されるのは、ハイドロキシアパタイトの人工骨です。その形態は細かな細粒状で、その粒の中は多数の気孔が空いています。その気孔が周囲の組織と馴染み、栄養を吸収し骨に転換しやすくなるのです。
人工骨は感染症のリスクや毒性の心配がなく、安心して使用できます。信頼できる製品として厚生労働所の認可も下りており、日本国内で多く流通しています。

しかしながら、現時点では他の骨補填材と比べて骨を作り出す増骨効果は劣ります。そのため、臨床の現場では、ほかの骨補填材と兼用して使用する場合が多いようです。大学やメーカー各社で様々なタイプの人工骨の研究が進んでおり、今後の機能性の向上に期待できます。

安心して骨造成術を受けるための心得

インプラント治療の成功は、顎の骨にかかっているといっても過言ではありません。インプラント手術が一般的になっている昨今、インプラント体をしっかりと固定できる状態に顎骨を保つ為に行う、骨造成術とそれに使う骨補填材は欠かせない存在です。

大学やメーカー各社では、人工歯根の開発と共に骨補填材の研究開発にも力を入れています。各種様々な優れた骨補填材は生まれていますが、未だ自家骨に代わるほどの骨補填材は存在しません。全ての材料にはメリットとデメリットがあり、骨補填材の使用には何らかのリスクが伴います。

また、優れた増骨効果が認められている製品であっても、厚生省の認可が下りていない事から日本では流通していない場合もあります。その場合はドクターが個人的に海外から輸入していることもあるため、ご自身の骨造成術にどのような骨補填材が使用されているのか気になる場合は、担当のドクターに尋ねると使用する骨補填材のメリットやデメリットも含めて、詳しく説明してくれるでしょう。

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