骨造成の失敗

歯の模型

骨造成術が失敗する理由とは?

骨造成術が失敗してしまうと、十分な骨量を確保できないためにインプラント埋入手術が先延ばしになったり、即時埋入(骨造成と同時に人工歯根を埋入する術式のこと)が上手くいかずにインプラントが脱落したりしてしまいます。しかし、手術が失敗する原因が事前に分かっていれば、リスクを回避することもできます。

骨造成手術やインプラント手術が失敗する理由は、歯科医師の腕の良し悪しだけではありません。術後の過ごし方や自己管理に原因がある場合もあるのです。骨造成手術が失敗してしまう代表的な理由4つについて、詳しく説明します。

理由1 細菌感染

骨造成術だけでなく、インプラント手術が失敗する原因の1つとして挙げられることも多いのが「細菌感染」です。歯科医院によって消毒や滅菌の清潔レベルは異なります。

一般的な歯科医院は、オペ室のような特別な治療室を併設していないことがほとんどです。消毒・除菌が不十分な環境下で外科手術を行うことで、空気感染したり、手術に使用する器具が適切な滅菌・消毒処理されていないために、器具から感染したりすることがあります。
そのため、オペ室がある医院は細菌感染に敏感で滅菌対策を行っている医院であるという目安の1つとなります。最近ではホームページ上で滅菌消毒に関する情報を発信している歯科医院も増えてきました。

手術中だけでなく、術後に感染することもあります。傷に触りたくないからと、口内全体をなおざりなブラッシングで済ませてしまっては口腔内環境が悪化してしまいます。場合によっては、即時荷重の人工歯根や埋入した人工骨の除去をしなくてはいけなくなることもあります。傷には触らないように気をつけながら、しっかりとブラッシングしましょう。

理由2 歯周病

歯周病は顎骨を溶かす病気なので、歯周病菌に感染してしまうと、骨造成手術によって本来得られるはずの骨が十分に造成・再生されず失敗してしまう場合があります。インプラントは虫歯になる心配はありませんが、極端に細菌感染に弱く、歯周病菌を原因とする「インプラント周囲炎」に感染します。

歯周病菌の感染から、骨造成を行った骨やインプラントを守るために毎日のブラッシングを丁寧に行いましょう。歯科医師や歯科衛生士の指示通りに自宅でのセルフケアを行うほか、歯科医院での定期的なメインテナンスを受診し、歯周病を発症しないよう常に口腔内を清潔に保つ必要があります。

もともと歯周病のリスクが高い方は、術前にしっかりと歯周病の治療を行う必要があります。骨造成やインプラントの手術を行う前に、口腔内の細菌の数をコントロールすることが優先です。歯石のお掃除といったプロケアだけでなく、患者様ご自身の口内環境に合ったセルフケア方法を身に付けた後に手術に臨む必要があります。

理由3 喫煙

喫煙の習慣がある方は、術前・術後に禁煙しなくてはいけません。タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血液の循環を妨げます。組織に十分な酸素が供給されず、増骨材が骨と融合しにくくなることで骨の再生が妨げられたり、インプラント体が骨と結合しにくくなったりします。

また、切開した傷口の治りも遅くなるため、いつまでも傷口が塞がらずにいることで細菌に感染する可能性もあるのです。手術の成功には、少なくとも術前1週間~術後3週間は禁煙を行う必要があります。

理由4 糖尿病などの全身疾患

糖尿病に罹患している方は細菌に感染しやすく、傷の治りも遅い傾向があります。さらに糖尿病が進行すると免疫力が低下し、歯周病を引き起こす可能性が高まります。糖尿病により血糖コントロールが上手く出来ない方は、骨造成術やインプラント手術のリスクが高く、外科手術を断られることが多いです。
糖尿病の方が手術を行うには、血糖値のコントロールが大切です。HbA1cが7.0未満であることが手術の必須の条件となります。

糖尿病以外にも、骨がもろい骨粗しょう症や、心臓病、腎臓病といった全身疾患をお持ちの方も、手術を断られることがあります。手術を希望される場合は、服用しているお薬の関係や全身状態を把握しているかかりつけの内科医師と、歯科医師との連携が必須になります。

骨造成が失敗した場合のリカバリー方法

「骨造成術が失敗し骨が十分に再生されなかった」「インプラントが定着せず抜け落ちてしまった」など、骨造成術やインプラント手術が失敗した場合でも諦めないでください。骨は高い再生力を持っているので、ある程度の時間が経過すれば再度手術は可能です。

失敗した原因が何かを知り、それに応じた対策を取ることが大切です。患者様ご自身のセルフケアでリカバリーできることもあります。例えば、喫煙が原因で失敗した場合は、禁煙外来へ行ったりニコチンパッチなどを利用したりしましょう。歯周病が原因だった場合は、セルフケアの徹底や医院でのクリーニング回数を増やすなどのプラークコントロールを行います。
失敗した原因を追究し、自分自身でも努力することが手術成功のカギとなるでしょう。

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